EOS kiss スケアリング調整

前書
 光軸が決まるとカメラのスケアリング不良が見えてきます。
左の図は光軸とスケアリングの関係を自分なりにまとめたものです。

@光軸がずれた状態でスケアリングを調整し、画素面に垂直な光が入った状態です。光軸の狂いとスケアリングの狂いが相殺された状態です。カメラを回転させなければ問題はないように思います。でも、接眼部の回転体を回すとAの状態となり、光軸ずれ以上のひどい状態になると考えられます。
また、鏡筒を変えるたびにこのスケアリングを調整しなくてはいけなくなり、撮影を開始するのに時間がかかることになります。

 理想と考える状態は、望遠鏡側でドローチューブの接眼面に対してきちんと垂直な光軸を導入し、カメラ側でカメラのメスマウントと画素面を平行な状態にもっていく。
 この状態が鏡筒を変えたり、カメラを回転させたりしてもいつも画素面に垂直な光が入る状態を作ることになります。
 このことは、分かっていますがどちらも0.1mm以下の調整が必要となり、何を手掛かりに確立するかが非常に難しく思われます。

 今まで、撮影結果の星像を見ていると、スケアリングの狂いなのか、光軸の狂いなのか、見極めができない状態でした。今回、光軸を追い込むことができるようになると下の写真のように画像のどの部分の星像も円となり、ただ、場所によってピント位置が違うことが分かってきました。

 ということで、スケアリング調整はカメラメスマウントと画素面が平行になることを目的に改造調整を進めることにしました。

スケアリング狂いの確認方法
 画素面がカメラメスマウントに対してどの方向に何ミリ傾いているのかを確認する方法ですが、ドローチューブの繰り出し量を測りながら確認することにしました。

 わたしのカメラの場合上下にスケアリングの狂いがあります。
 画像左側下がジャスピン上がピンボケです。
 右は上がジャスピン下がピンボケです。その差は
下が0.08mm前ピンとなります。

スケアリング調整
 まず、4本のねじで固定されているメスマウントを外します。
 ねじは緩み止め剤が塗られていますが、緩みます。

バラいてみると
@メスマウントは2mm厚ほどあり、大変丈夫です。
Aバヨネットの板スプリングは薄く、はめる位置がきちんと決められています。
Bひとつ気を付けなくてはいけないのはマウントのロック用のピンが出ています。根元にはバネが付いていますから飛ばさないように気をつけます。
 挟むものはよっちゃんからの情報でK-ASTEKさんにスケアリング調整に便利なスペーサーがあるということで注文しました。
 サイズは0.03 0.05 0.07 0.1 0.2mmの5種類が各20枚ほど入れてくれています。組み合わせによりわずかな厚み調整もできます。

 中心穴は2.6mmですので、今回のメスマウント固定のねじは2mmのスクリューねじなのでうまく挟みこめそうです。
 組み込み作業になりますが、画像の下が0.08mm前ピンということはマウント上部に画素面が前に0.08mm傾いていることになっていると思い、メスマウント上2点のねじ部に0.07mmのスペーサーを挟むことにしました。

 組み付けるときに気を付けなくてはいけないことは、バヨネットの板ばねをねじ部に挟んでしまわないようにきちんとはめること。
スペーサーは簡単にずれたり、落ちたりしますので、軽くシリコングリス等で貼りつけるようにしました。


 ところが失敗!
 画素面に像が逆に写ると思っておりましたが、結果はより悪くなってしまいました。
 結局、外気-4℃の真っ暗な中で、小さなライトを頼りにメスマウントを外し、ピンセットもない中で上下を入れ替えました。

 うーん、確かに画像下が前ピンになっていたと思うのですが、画素面に写る像は逆さになっているのではないでしょうか?
 わたしの思い間違いのようですが、結果としてもう少し厚みが必要と判断して、マウント下部に0.1mmのスペーサーを入れることにしました。

撮影検証
 後日撮影に行ってきました。この日は冬型の気圧位置で北風が強かったのですが、透明度は高くさそり座を狙うために出かけました。しかし、南にはガスが発生しておりこの画像も透明度はよくありません。
 星像はまだ下側が前ピン状態ですが、ピントをずらせて妥協しています。


 撮影条件:ISO800 15分1枚 モノクロ変換

 左の画像上でクリックしていただくと等倍画像が出ます。

後書
 スケアリングという言葉はよく耳にするのですが、きちんとした意味を分からず使用しています。
 ただ、前書で述べたようにドローチューブの口までは光軸調整で光が垂直に入ってきて、その口と画素面を平行にすることがスケアリングと解釈しています。
 今回は、カメラのメスマウントの浮き具合を調整することでメスマウントと画素面が平行になるようにと取り組んできました。でも、前提としてεの光軸が合っているとが絶対条件になります。この調整によりどの鏡筒、カメラレンズを使用しても均一な像が得られることを期待したいです。
2010年3月

追記
 撮影カメラのスケアリングは光軸があってある望遠鏡に取り付け一度決めてしまえばもう調整をする必要がないと考え、スペーサーを挟んで固定をしてきました。しかし、光軸が完璧に決まっていないということから現地の寒い暗い中でメスマウントをばらくことは大変なことと実感し、調整ねじを付けることにしました。
 kissのメスマウントを固定している4本のスクリューねじの隣に2.6mmのねじを切りました。
 メスマウントの材質はステンレスでしょうか?結構固く慎重に穴開けねじ切りをおこないました。特にタップを立てるときは十分に油を注ぎ、決して無理をしないで「右にねじを切っていくときに固いとすぐ戻り」を繰り返して焦らず慎重に行いました。以前、これを焦ってタップを折ってしまったことがあります。2.6mmぐらいだと簡単にタップを折ってしまい、折れたタップを取り除けなくなることがありました。
 今回設けた押しねじの場所には不満があるのですが、押す部分にあたるところを考えると仕方がないと思っています。

 右に写真に見えるバヨネットの板バネになる部分は薄いステンレスのようです。その下は肉抜きがされているプラスチックになっています。押さえるには不安を感じますが、この薄いステンレスは結構強度がありそうなので押さえねじの受け側に使うことにしました。
 押さえねじは径2.6mm長さ3mmのものがほしいところなのですが、近くのホームセンターには長さ6mmのものしか置いていません。仕方なく3mmに削ることにしました。

 こういうときに削るためのグラインダーというものを持っていないので、サンダーを万力に取り付け左の写真のようにセットスクリューねじを固定して3.2mmまで平らに削りました。
 調整のための基準としては頼りないのですが、メスマウントの横の黒いプラスチックとの段差を基準として測定をして調整を行うことにします。

2012年1月5日の基準
左上 0.52    右上 0.42
左下 0.70    右下 0.60

 今回の改造以前のスケアリング量を再現しました。

 これで、暗い中でも容易く調整ができるようになりました。
2012年1月