Vixen VC200L 洗浄および光軸修正

前書
 2月になり冬の星座も沈むのが早くなって春の系外銀河に備えてVC200Lの鏡の洗浄と調整を行うことにしました。
 しかし、カセグレン系の調整は初めてのことなので、うまく調整ができるか悪戦苦闘が始まる予感がします。

鏡筒の構造
 まずはVC200Lの構造を自分のための備忘録のつもりで記述します。

○主鏡部
 主鏡セルと後部カバーが分離されています。この結合方法はカバーの主鏡光軸調整用3点ねじで固定されています。
 主鏡はセルにR200SSと同じ様に鍵状のゴムで前方向から押さえ、その爪と主鏡のふちを隠す環が設けられています。背面には薄いコルクがはられています。側面からは6点のゴム付真鍮板で押さえています。

*問題点
・前からの鍵状のゴムは圧迫具合が分かりにくい。
・側面の押さえは後部カバーにつけた状態では接眼体に主鏡の内円が当たらないように調整ができない。
○接眼部
 接眼部のつくりは屈折や反射と同じラック&ピニオンで、割とスムーズに動きます。
 ドローチューブの内部にはドローチューブと独立した3枚3群の補正レンズがはめられいます。その前面には長いバッフルが付いています。ドローチューブ内とバッフル内には内部反射を避けるために筒状になった植毛紙のようなものが計3本はめられていました。
 補正レンズは筒先側から1枚、接眼から2枚はめています。

○副鏡部
 副鏡はスパイダーの中心の引きねじで固定され、その周りのいもねじ3点で押され調整されています。

*問題点
・副鏡セルとスパイダーの間には大小大の3枚のワッシャが挟まれていました。微妙な調整が難しそうです。Oリングに交換しました。
・副鏡バッフルが外せず、また、副鏡はセルに貼りついているようで洗浄が難しい。
・スパイダーは鋳造ものなので綺麗に張られた(?)状態であるが太い。
分解・補修・洗浄
 洗浄をしたときの主鏡や副鏡の写真の撮影を忘れてしまいました。

 左の写真は補正レンズを分解したときの写真です。
 「メガネのシャンプー」で機嫌よく洗浄をしているとレンズのコバ塗りがどんどん消えて行きました。これにはびっくりしました。本当に墨汁を塗っているのかな?
 今後も洗浄をするので水で消えにくく、コートに影響の少ない水性のものを探しました。結局、「ポスカ」を試すことにしました。
 黒さといい、耐水性といい、コートへの影響といい、最適ではないかと思います。
 この補正レンズは1群と2群のセルの間に空気抜きの穴があいているため長い年月の間に内部も汚れてくるようです。


 組み立ては難しくなく、3個のレンズの押さえ環は全て同じ寸法ですし、2つの固定環も同じものです。
 右の上の写真の左側は主鏡バッフルの中に差し込まれていた植毛紙?です。経年劣化のためひびが入り表面もボロボロになってきています。
 この植毛紙は透明のアクリル板の上に貼られているものを丸めて差し込んだ状態で収まっています。
 上の写真の右側は新しい植毛紙です。見るからに黒く見えます。

 新しいものの作り方は、身近にあるクリアファイルを切り、右下のようにクリアファイルに丸めるように貼っていきます。
 それから、1cmほどずらして貼り、クリアファイルのつなぎ目を植毛紙でつないでしまい筒状につくります。


 このような筒状の植毛紙が、主鏡バッフルに2個。接眼部に1個が差し込まれていました。接眼部の寸法が少し違うので作成時には気を付けてください。

光軸の修正
 ニュートン反射と違って斜鏡のセンターや主鏡のセンターマークの無いVC200Lをどのように光軸を持っていけばいいのか、サイトをググりました。
 いくつかのサイトではシングルレーザーを使う方法が紹介されており、とても理にかなっています。
 わたしもこの方法で試すことにしました。
1.レーザーの偏心をとる。
2.副鏡を外し、接眼体のセンターを調整るする。
3.副鏡を付け、反射してきたレーザー光から副鏡を調整する。
4.スパイダーの影をたよりに主鏡を調整する。

 この状態で曇りがちな夜空に撮影に行きましたが、星像が右上に伸び、特に画像右上方向がひどい状態でした。
左はそのときにフラット画像です。(CMOSのごみがすごいな・・・。)
 振り返ってみれば、光軸調整をしているときに一つふに落ちないことがあったのです。
全てが同心円に調整ができたと思っていましたが、最後の確認のために主鏡に写る副鏡の側面の影を確認したところ、ピンボケ画像で恐縮ですが、側面が均一に見えていないのです。

 結果的には光軸の追い込みが足らない結果となったようです。
 こうなるといつも使いなれた十字線いりセンターチューブとセンターアイピースを使うことにしました。

 まずは、完全にセンターチューブの偏心を取り除く工夫をした。

改良点
1.ドローチューブへの60mmリングとセンターチューブを切り離す。
2.接合部はテーパー状の三点止めとする。
3.接合部の傾きは3点のいもねじで調整ができるようにする。


 調整には回転をさせながら傾きを変えることにより、完全に偏心をとることができます。

 以前より、「便利だから、作ったら!」とよっちゃんに言われていた調整台をつくりました。
 元は680円の折りたたみテーブルです。

 わたしの得意な「筒横調整」はこのVC200Lには通用しません。
これ、とても便利です。

 光軸調整の手順は次の通りです。
  1.接眼体の調整
  2.副鏡の調整
  3.主鏡の調整

 ニュートン系でもそうですが、この手順で間違いないと思います。
1.接眼体の調整
 まずは、副鏡を外した状態で調整をします。センターアイピースを覗くとバップル内の奥にスパイダーの中心部が見えてきます。

調整方法はひきねじを3本とも緩め、押しねじのみで調整をします。調整のターゲットは副鏡の引きねじの中央の穴を4等分する部分です。また、同時にスパイダーの影にセンターチューブの十字線がのるはずです。
 一度追い込めたら、確認のためにセンターチューブを90度ずつ回転させて、中央の穴を4等分しているかスパイダーの影に十字線がきちんと乗っているか確認をします。
 もし、回転毎にずれがある場合はセンターチューブの偏心をこの機会にきちんと取ります。

 また、バッフル先端部の円とスパイダーの中心台座の円にずれがある場合はバッフルの取り付けをもう一度見る必要があります。
2.副鏡の調整
 まずは、引きねじを緩め押しねじを同じ高さに調整し調整台にのせます。

 調整方法は押しねじを使って、ターゲットはセンターチューブの十字線の交点にアイピースの見口の中央をとらえることです。この調整が一番難しいですね。
 難しい理由は見ながらの調整ができないこと。副鏡は凸面鏡のためターゲットがとても小さく写っていること。また、凸面鏡のため思う方向と逆に動くこと。また、ターゲットは往復反射してきた像なので調整はとても微妙です。

 一連の調整の中で一番難しく一番肝になる調整だと思っています。

*右の写真は全ての光軸調整を終えた写真です。
3.主鏡の調整
 今回は押しねじを緩め引きねじだけで調整をします。
ただ、引きねじを緩めすぎると主鏡セルが落ちます。気を付けてください。

 主鏡の調整のターゲットはスパイダーの影をセンターチューブの十字線にのせることです。
 副鏡の調整に比べると非常に調整ねじの動きは鈍感で調整が容易です。
 一度調整ができたら、接眼体の調整のときと同じようにセンターチューブを90度ごとに回転させて十字線がスパイダーの影に乗るかを確認します。もし、接眼体の調整のときに乗っていたのにこの確認で回転とともに乗らないようでしたら、副鏡の調整をし直します。
 もう一つ確認したいことがあります。

 センターチューブを取り外し、2インチの接眼部の周辺から左の写真のように副鏡の側面を見比べます。
 光っている隙間はどこなのか自分にはよく分かりませんが、360度どこから見ても同じ幅で見えていることが光軸調整の成功のあかしだと思っています。


 また、いつものようにフラット画像の等光度曲線でも確認してみました。すこし、主鏡の圧迫があるようですが、ほぼ満足できる調整になったと思います。

後書
 今回、前オーナーから数えて何年もの間洗浄されていなかった鏡と補正レンズを洗浄し、光軸調整にのぞみました。ニュートン系とは違い鏡にセンターマークがないため難しさを感じていました。しかし、ニュートン系と同じ方法で調整をしていくと共通するところも多いことが分かりました。しかし、斜鏡といい副鏡といいとても微妙な調整が必要だと改めて実感しました。
 ううん、それにしてもバイザックの等光度曲線はとてもきれいだな。イプではカメラが同じでもこんなにきれいに巻いてくれません。
2012年3月