ε160の光軸調整(鏡の圧迫調整)
(各部の位置決め) (鏡の圧迫調整) (光軸修正)

前書
 主鏡の洗浄の後光軸を合わせ、いざ撮影となり前ピンからピントを追い込んでいくときにドーナツ状の焦点内像を見て「あれ、おかしい」と思ったことがあります。

 このような焦点内像が主鏡を洗浄するたびに形を変えて現れます。
 ときには、おむすび型、ときには12月齢ぐらいの形など画像の中心像であっても表れるときとそう気にならない時がありました。

 この当時、光軸ずれもあったようですが、これが主鏡の圧迫によるものだとは当時ピンとこなかったのです。
 ε160の主鏡の厚さは約2センチほどもあります。その板硝子がさほど締めていないねじの力で歪みを生じるとは思ってもいませんでした。

 では、理想的な主鏡の取り付けとはどうすればいいのでしょう?
@鏡上下から、ほとんど押さえないがガタがない状態。
Aどの角度に鏡筒を向けても鏡自身の重さでたわまず、ずれない背面と側面の取り付け。

 この2点をできるだけ実現できればと思い取り組みました。

ε160とε180のセルの構造の違い
ε160のセル構造

 ε160はニュートン反射のセルとよく似た構造になっています。
 わたしの持っているニュートン鏡と少し違うのは
@鏡前面の3点押さえ爪が幅広い。
A背面がドーナツ状の平面で支えている。
B背面のクッションとして、なぜか中央部が皿状に凹んだゴムシートが2mmと1mm厚の2枚重ねになっている。それから、鏡の背面と接する部分は透明ビニル地のものが貼られていて、薄い紙が挟まれている。
側面は3点のいもねじで直接鏡を押さえるのではなく、真鍮の曲面板とゴムクッションで主鏡を押さています。
ε180EDのセルの構造

 ε180はε160と主鏡の保持方法が全然違います。

 相違点をまとめると
@3点フローテーション支持という方法で主鏡背面から押さえている。
A鏡面から押さえ調整をするのではなく、背面の3面を調整することで、鏡面周辺には均等に力がかかる。よって、セルを鏡筒に付けたまま調整ができます。
B鏡面の抑えは、3つの爪ではなく、円形の環があるため、均一に押さえている。それから、輝星から、とげとげ状の光条が表れにくいマスクの役目もしていると思われます。

 うーん、素晴らしい。たぶん、背面から押さえる3つのコルクは裏中央で自由に首が振れるようなねじで止められているのでしょう。素晴らしい!
画像提供:T-Fixさん

セルの改良?
 ε180のように背面3点からの圧迫調整ができないかとセルをにらみつけたのですが、鏡面を環で均一に押さえる構造と精度が思い付かず、あきらめることにしました。

 でも、三点(面)フローテーション支持構造にするために左のようなコルクを買ってきました。このコルクの大きさは直径25mm、厚み2mmの接着面付きです。
 160mmの主鏡に対して小さいように思いますが、書籍に記載している計算によるとこのぐらいの大きさでいいそうです。

 それから、このコルク面にポリテープを貼って円形に切り取ります。
これは、主鏡との滑りを良くするためです。
 この丸いコルクをもともと付いていた1mmのゴムシートの貼り付けます。このゴムシートのこだわる必要はないのですが、1mmの受け皿が必要なこととスライドできる機能がほしかったためです。

 貼る位置は120°に間隔をあけるというのはわかるのですが、中心から70%とか80%とか書籍によって違います。

今回はセルが環状になっている関係もあり、70%あたりに貼りました。
 ε180のような環を製作しました。でも、この環は180のように主鏡を押さえる役割をしているのではなく、押さえる三点爪を隠すためです。
 この必要性は、輝星を撮影した場合、光条の間にこの爪の影が写ります。それから、主鏡のメッキの淵が影響するのか光条の間にウニのようなとげとげが広がります。(間違っていたらご指摘ください。)

 この環の製作は薄い発砲塩ビ板を円形カッターで切りました。内円の淵がまだなめらかとは言えませんが、効果を期待しています。

 このときに劣化が激しい爪のゴムを1mmの薄いゴムシートを切って作りなおしました。

主鏡圧迫の調整方法
 ガタがなく圧迫しない押さえ爪の締め方を下記の順にしています。

@主鏡の側面3点ねじを均等にしめ、当たったら半回転ほど戻し、主鏡が動く状態にする。
A主鏡前面の押さえ爪のねじ6本を圧迫がかかるかかからないまで締める。
Bセルの後ろの中央に見えている膨らんだ黒いゴムシートを主鏡背面に沿って
スライドさせるようにします。
・全く動かない:しめすぎと考え強くしまっていると思われる爪のねじを緩める。
・一部が引っ掛かる:その引っ掛かる爪ねじがしめ過ぎと考え、緩める。

 こうして、セル裏のゴムシートがスムーズに動き、かつ、主鏡が前後にガタつかないことを確認して、圧迫量を小さくし平均化しています。


 最後に側面の三点いもねじを当たる程度に締めます。
主鏡圧迫の確認方法(室内)
 主鏡に過度な圧迫をしたくはないけど、押さえが少ないとガタつき光軸を狂わせることになります。

 試す必要があることとして、横に寝かした状態と立てた状態で光軸を見てみます。

 わたしは、横向きにして光軸合わせをしますので、立てるとわずかに光軸が動いていることがありました。

鏡筒を横にした画像 (画像はその症状を示した合成です。) 鏡筒を縦にした画像
室内でフラット画像を使った主鏡圧迫の確認方法を紹介します。


 左の画像はELパネルを使ってISO100・2秒のJPEGのフラット画像をステライメージの「周辺減光/ガブリ補正」「等光度曲線」の様子です。
 「段階」を変えると同心円の数が増えたり減ったりします。分かりやすい段階に変えて構いません。また、「チャンネル」をRGBからBに変えても構いません。鮮明に円が描くようにしてじっくり見ます。

 この画像を見ていただいて気づくことは、「同心円の中心が画像の中心を外れている。」「左の等光線の間隔が広く、右は詰まっている。」「同心円が円ではなく、12月齢ぐらいに歪んでいる。」こんな点を指摘されると思います。

 わたしが思うに、圧迫の影響が表れているのは「同心円が円ではなく、12月齢ぐらいに歪んでいる。」このように真円でない等光線が圧迫を表していると思うのです。

 他の「同心円の中心が画像の中心を外れている。」「左の等光線の間隔が広く、右は詰まっている。」の症状についてはオフセットや光軸不良の影響があるようです。
 このことについては「光軸の修正」のときに述べたいと思います。
 左の画像は主鏡の圧迫調整「押さえないけど動かない」をして、1日鏡筒を立てた状態で放置しフラット撮影をした画像です。
光軸は合っていませんが、きれいに同心円に等光曲線が巻いているのが分かると思います。

 この方法はあくまでも、室内でできる一つの目安にしてください。
 撮影時に主鏡の圧迫を知るのは「前書」の画像のように光軸が合って焦点内外像がきれいな円形ドーナツになっていることで確認してください。

後書
 今回、「ガタがないけど、圧迫しない」そんな、主鏡の押さえ方を目指したつもりです。
 そのためには、鏡自身の重さで歪まない(らしい?)3点フローテーション支持。圧迫具合が分かる手ごたえの方法。室内でわかる確認法と、いろいろ試してきました。
 もし、圧迫があっても光軸が合っていれば星像は焦結します。でも、その像は真円ではないと考えられます。仮に1.5倍に縦に伸びていたとしたら、光の量は0.67になってしまいます。だからこそ円である必要があるのでしょうね。


 ここに述べたことはεやニュートン鏡に関することですが、ステライメージの等光曲線は屈折望遠鏡やカメラレンズにも有効だと思われます。
一度、ライトフラットを撮影して確認ください。周辺減光ボタンを押すときちょっと怖さを感じるかも・・・。

追記
 今回は圧迫の調整がしやすいように工作を始めました。
 ε160は一般的なニュートンと同じく主鏡背面を固定し、前面の3点の爪で押さえる仕組みになっています。その爪を各2つのねじで調整するのですが、これまた微妙な締め具合をしなくてはいけません。難しいことは手ごたえでは圧迫具合が分からないことです。それで、ε180の背面から調整する方法に改造を進めました。
 まず、準備したものは円形のアルミ板です。
自分で切り取ることもできますが、1mm厚直径30mmのもの都合よく売っていました。

 このアルミ板の中心にドリルを使ってへこみを付けます。
 約半径の7割のところにピポットの芯になる3mmのねじ穴を空けました。手元にあったボールのついた特殊なセットスクリューです。
 ただこの構造だとくぼみに乗っけているだけなので、隙間が開くと円形アルミがずれることになります。
 前面部分は爪が隠れるように円形マスクを挟み3つの爪で固定しています。
 このマスク、今回は内側を紙やすりできれいに磨き上げました。以前のものもそう内側面取りは悪くはないと思っていたのですが、輝星の周りにウニウニの光条が現れます。

 私はその原因がこのマスクにあると思っているのですが、一向に改善されません。

 これがだめだとなるとドローチューブ内を疑ってみたいと思います。
 (2011年11月現在 改善されず。)
調整方法
 主鏡の圧迫調整方法ですが、ε180と同様になります。

@背面のねじと、側面のねじを緩め、主鏡前面のリングのねじをすべてきちんと締めきります。

A机の上に主鏡のついたセルをひっくり返してゆすり主鏡を落ち着かせます。背面の3点フローテーションのねじを固くなる寸前で止めるのですが、そのときに左の写真のように円形アルミが回転する程度の押さえとします。3点とも同じぐらいの回転をするところでロックナットを締めます。

B側面の押さえねじも当たるか当らないかぐらいの押さえ量にします。
ファンの取り付け
 上の状態だと主鏡の裏が丸見えになってしまいます。外気と順応させるにはいいのでしょうが、光が入る心配があります。そこで、ふたを兼ねてファンを付けることにしました。
 目的は二つ。
@外気との順応速度を上げること。
A主鏡の結露防止を期待すること。

 適当なファンとしてはパソコンケース用の12Vが適当と考え、左図の6cm薄さ10mmのものを用意しました。
 まずは、黒い2mm厚の発砲塩ビ板を円形カッターを使いきりときます。
 6cmのファンの通り道になる穴も開けます。

 工夫をしたところは主鏡調節ねじのでっぱりの量が14mmしかありません。その範囲内に収めるようねじ止めと電源端子を取り付けました。

追記後書き
 主鏡はなかなか曇らないと思っていたのですが、先日の撮影の際に白色LEDで照らしたところ主鏡にうっすら曇りが見えたのです。乾燥空気を吹きいれることも考えたのですが、まずはふた代わりにファンを回してみることにしました。

 電圧を変えて様子を見てみると12Vでは規程通り、3500rpmの速い回転でうなり音を上げて風量もたくさんです。でも、5Vでも静かに回り曇り止めのためには十分の風量がありそうです。

 成果のほどは後に報告します。
2011年11月