ε160の光軸調整(光軸修正)
(各部の位置決め) (鏡の圧迫調整) (光軸修正2)

前書
 各部の位置決め、鏡の圧迫調整が終わったら、光軸の修正に進みます。
 光軸の修正にはセンターリングアイピースとレーザーがありますが、ここでは、センターリングアイピースを使った方法について記述します。

 タカハシのセンタリングチューブに付属していた「光軸修正法」をもとに進めていきます。

 誤った記述等があるかもしれません。よければご指摘ください。

光軸修正の治具について
 修正用のセンタリングアイピースはわたしの知っている限り、タカハシのものが優れているように思います。

 優れていると思うところは
@センターアイピースの覗き穴がとても小さい。老眼や近視の人が裸眼で見るにはとても見易くなります。
Aアイピースの裏面には2か所円形に反射する部分を設けています。合わすときに目安になります。
Bテグスで十字線を張る。テグスは背面が明るいと影に暗いと淡く光ります。とても見やすいです。


 後は、ドローチューブに取り付けたときに偏心を修正した方が、のちの光軸修正がとてもしやすくなります。
光軸修正の手順
 右の画像はカメラが付いていますが、調整をするときの見る方向を示しています。

左が筒先、右が主鏡


 この方向で理解していただき図等を見てください。
 話を進めるうえで、各部のねじの呼び名がややこしくなってきますので、左側の写真の呼び名、番号で述べていきます。

 修正の順序は
@スパイダー(斜鏡のセンター)の仮位置決め
A斜鏡の調整
B主鏡の調整
Cスパイダー(斜鏡のセンター)の本位置決め
 この手順で進めます。

@スパイダー位置の仮調整
 まずは、斜鏡をスパイダーにぴったり貼り付けます。

 この手順は
(1)スパイダーの筒内側のロックねじを緩める。
(2)主鏡をセルごと外す。
(3)斜鏡調整ねじを3本とも緩め、引きねじを締めて、斜鏡をスパイダー中心部の円盤にピタッと貼りつける状態にする。

 そのときのアイピースを覗いた斜鏡のセンターマークの位置です。
本来、センターマークが左側に寄っているのはいいのですが、上または下にあることはおかしいと考えます。


 おかしい原因はドローチューブの軸とスパイダーの交点(斜鏡のセンター)軸がずれていることになります。
 でも、ここにも落とし穴がありそうです。スパイダーの調整ねじ@AがBCよりも筒先に付けられている場合同じ症状になりそうです。

 まあ、このことは仮調整なので置いといて、修正を進めます。
 修正方法は斜鏡調整ねじの手前@を締めればセンターマークは下に動かすことはできます(左中の図)がこの方法ではなく。斜鏡のセンターマークがセンターチューブの横線に乗るように、スパイダー調整ねじ@Aを緩め、BCを締めます。(左下の図)

 これで、ドローチューブの軸とスパイダーの交点(斜鏡のセンター)が交わったと考えます。

A斜鏡の調整(斜鏡のセンターの位置決め 1)
 上の修正が終わると斜鏡のセンターは中心左の横線上にあるはずです。

 センターマークを右のセンターリングチューブの十字の交点にもっていくには斜鏡調整ねじ3本を均一に締めて行くことになります。
 これは、スパイダーから斜鏡を平行に主鏡側へ動かしていることになります。

 とはいってもまっすぐ右に動いてくれません。センターマークが上に移動したら手前@ねじを締め、下に移動したら手前Aねじを締める。
 右に動きが少ない場合は奥ねじを締めますが、

 左の写真のようにセンターリングチューブの交点に斜鏡のセンターマークが あったときに斜鏡の調整ねじ3本分の「出っ張り長さ」を測定します。
 ほぼ同じ長さであれば、いいはずです。

 場合によっては奥ねじの長さが違う場合がありますが構いません。
 後の主鏡のセンターマークの導入の作業のときに修正されます。
A斜鏡の調整(斜鏡のセンターの位置決め 2)と (主鏡のセンターマークの導入)
 左の図は上の透視図を90度回転させて見た図です。
 斜鏡の奥のねじの長さが他の2つのねじとでっぱている長さが違う場合があると述べましたが、このことは光軸に影響するのでしょうか?
 わたしは「斜鏡と主鏡の傾きを調整すれば、光軸は問題なく出る」と思っているのですが、他の要素に影響を及ぼすように思われます。

 右下の焦点内像の光条を見てください。以前より気にはなっていたのですが、2本の平行な光条の太さが違います。写真では1か所しか写っていないのですが、画像上側すべて4本が太くなっています。
 ここで思うに、左上の透視図のような場合スパイダーに対して斜めに光が入ります。まだ、実証していませんが、その影響ではないかと思ったからです。
 左上のように斜鏡の調整ねじの奥ねじの飛び出しが短くなっている場合を例にとります。

修正手順は
 スパイダーの調整ねじ@Cを引き、ABを緩める。
 主鏡のセンターマークがずれて行くので、斜鏡の引きねじと奥ねじを緩めて主鏡のセンターマークを合わせる。
 斜鏡の調整ねじが同じ高さになるところまで調整します。
 後は主鏡のセンターマークが中心にぴったりくるようにします。
上下にある場合 : 斜鏡の回転
左右にある場合 : 奥ねじ
 このようにわずかなずれを調整して合わせます。

 では、何を基準としてこの調整がうまくいったかというと。

@センターリングアイピースを覗いて、センターリングチューブの十字線の交点に斜鏡のセンターマークがある。
Aこの十字線に主鏡のセンターマークがある。
B斜鏡の調整ねじ3本の飛び出し量が同じになる。

 この3項目が調整できたときに、スパイダーと斜鏡のセンターと主鏡のセンターが一直線になり、かつ、その軸はドローチューブの軸に垂直に交わることになります。
 この調整をすると、もし、主鏡をセルにべた付けしている(親ねじを飛び出さない)場合、ほぼ光軸が合いました。これは、タカハシの製造精度の高さによるものでしょうね。わたしのイプの場合ほとんど光軸が合ってしまいました。

 ここで、落とし穴がありました。なぜかε160の場合、斜鏡の調整ねじの3本のうち1本が3mm短いのです。なぜ、何のために?不思議です。

 ここまでの調整がうまくいけば、光軸修正の9割が完了した感じです。
斜鏡センター主鏡センターが合い、センターリングアイピースの裏の反射が合っていない場合

B主鏡の調整
 主鏡の調整は、斜鏡ほど難しくはありません。
 εの調整ねじは左の図のように三重になっています。
 調整は「親ねじ」を右に回すと、セル(主鏡)は後ろに下がります。
 反対に緩めて、「子ねじ」締めるとせる(主鏡)は前に出ます。
 「子ねじ」を右に回すと親ねじの位置を固定します。l

 親ねじの内部にバネが入っていないので、親ねじと子ねじが押し引きして固定したところで場所が決まります。
 最後にロックねじ17mmを薄いスパナで親ねじが一緒に回らないように気を付けながら締めます。

 主鏡の洗浄等でセルを外すとき、子ねじだけを緩め抜き取ると親ねじの位置が固定されたままセルを外すことができます。
 理屈の上では洗浄後子ねじを締めると位置は復元されます。
 左の写真と図のように主鏡に写っている見口付近の円形をセンターリングチューブの十字線に合わせます。
 十字線の交点に斜鏡のセンターマーク、主鏡のセンターマーク、見口付近の白く光る円が古典に同心円に重なり合います。
 ただ、主鏡に写る斜鏡の影だけがオフセットの分だけ主鏡側に膨らみます。

 これによって斜鏡と主鏡の光軸調整は完了します。
 でも、まだ十分ではありません。
 接眼体を45度回転させ、センターチューブの十字線と主鏡に写るスパイダーの影がきちんと重なる必要があります。
これが結構うまくいかないのです。

もし、重ならない場合は
(1)「@スパイダー位置の仮調整」がうまくいっていないため。この場合は光軸は合っていません。

(2)「A斜鏡の調整(斜鏡のセンターの位置決め 2)」の調整が十分でない。光軸はあったと言っていいでしょうが、わずかにスパイダーの位置がずれます。
 もうひとつ調整が必要かもしれない場所があります。
 左の写真はセンターリングアイピースをはずし、鏡筒を横状態で3.17cmの口に上側と下側から見た主鏡に写る斜鏡の影です。

 何を見るのかというと斜鏡筒の側面の上から見たら上側面、下から見た下側面が同じ幅見えると調整はうまくいっています。

 もし、片側が大きく見えていたり、片側が全く見えていないときは、「@スパイダー位置の仮調整」の調整がきちんとできていないことになります。ここからもう一度やり直しになります。
 右の図はカメラを上から2番目の写真のように取り付けELパネルで撮影をしたフラット画像をステライメージの等光度曲線であらわしたものです。

 最後に等光度曲線で確認をします。
 光軸と圧迫が適切だと、オフセット分だけ画像の中心からずれて同心円を巻く曲線ができます。(この画像少し下よりです。)

 また、レベル値も左右上下に綺麗な山形を描きます。

光軸ずれによる等光度曲線
 ステライメージの等光度曲線を使って、光軸ずれの原因が分からないか、いくつかの条件のうち1つだけをずらしてフラット撮影をしてみました。

*上の等光度曲線と使ったカメラが違います。下画像はノーマルカメラでフラット撮影をしました。よって、ミラーアップ時の減光が見られます。
 主鏡調整ねじだけをうごかして、見口付近が写真のように左に来るように動かしてみました。

 思ったほど顕著に等光度曲線は変わりません。
でもよく見ると、同心円の右側が狭く、左側が広いことが分かります。
 今度は、主鏡をもとに戻し、斜鏡の奥ねじを使って、主鏡マークをだけを左に寄せてみました。

 等光度曲線の中心は左によるとともに、曲線は横長の円になっています。
 これは、斜鏡のセンターマークだけを左に寄せ、斜鏡の楕円の中心にもってきました。

画像の中心によるので、とても気持ちよく思うのですが、よく見ると中心より右側等光度曲線が詰まっており、左側が広がっています。
 最後に、スパイダーの位置をずらしました。上の説明の(斜鏡のセンターの位置決め 2)の中の図のように斜鏡を無理に首を振ってつじつまを合わせました。

 等光度曲線は真円ではなく、左右の等光度曲線の間隔も違います。


 以前より、「あれだけじっくり光軸を合わせたのに・・・。」とあがってきた画像の隅の星を見てがっかりしていた原因はどうもこの現象のように思われます。
 この場合、センターリングアイピースから見る像は光軸が合っている像とほぼ変わりはないのです。ただ、よく見ると十字線の横線を境に上と下の斜鏡の影の面世紀が違います。また、右の斜鏡の筒の横のねじが上にずれています。

後書
 わたしが理解している限りの光軸修正法を分かりやすく述べるつもりでしたが、読み返すと分かりにくい記事になってしまいました。
 εの光軸修正をおこなう場合は、センターリングチューブや鏡筒に付属しているタカハシの説明書を理解したうえで、本記事をお読みください。タカハシの説明書の方が分かりやすく書かれています。

 やはり、反射は手がかかりあます。でも、イプは手をかけるとその分はっきり画像に返ってきます。これからも分かりやすい修正方法をさぐるとともに、より厳密に光軸を合わしていきたいと思います。

 本記事内容に誤りがあるようでしたら、ご連絡ください。
2010年4月