反射望遠鏡 200mm F3.5 PARKS社製
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全体
 この鏡筒は望遠鏡販売店のWEB通販の中古品コーナーでみつけ、購入しました。R200SSを所持しているのですが、Fナンバーが3.5と純ニュートンでは見たことがない明るさということ。鏡筒がFRPで出来ていること。この2点の怪しさに引かれて、程度はよくなかったのですが、購入を決めました。 

元の状態
○まず、外見・触った感じは
 前のオーナーが山吹色にきれいにペイントしてくれています。もとは白色だったようです。
 鏡筒の長さが長く感じました。R200SSと変わらない全長です。作りを見るとスパイダーの位置、接眼部の位置がけっこう中央よりに取り付けられています。また、主鏡もちょうど下のバンドの辺りにあります。
 さげてみるとこの鏡筒、重いのです。重さは量っていませんが、分解をしていくと、重さの原因は主鏡と鏡筒バンドがその原因です。(軽量化しなくては・・・)
 
○改造が必要な部分
 まずは、接眼部です。ドローチューブの内径は54mmほど。使い慣れたVixen製のR200SS用に交換をしなくては。
 スパイダーと斜鏡部は、スパイダーは厚さ1mmの4本の羽根型です。ただ、外側の取り付けねじが厚みがあり、そのうえインチねじです。このままでは巻きフードをつけにくいのでねじ部分を変更しなくては。斜鏡は63mmあり、とりあえずこのまま使いますが、オフセットされていません。5mmぐらい動かせばいいかな?
 ファインダーは50mm*8の直進ヘリコイドが付いています。接眼レンズは交換が出来ます。しかし、長いですね。これも、交換になりそうですが、これガイド鏡になりそうです。
 主鏡部は大きく変更する必要はないようですが、押さえ爪を隠す環を作るようにします。
 それから、マイナスのインチねじが多用されているうえ、かなり錆が浮いてきています。これらをステンレスのミリねじに変えなくてはいけません。
                        ・・・・・・・・けっこう大変そう。

接眼部の交換


 もちろん期待はしていませんでしたが、ドローチューブの入り穴の大きさは合いません。R200SS用に必要な穴は実測すると79mmですが、80mmの穴の開いた型紙を用意します。コンパスで描き、半分に折って切るとうまくいきます。





 型紙をもとにマジックで縁取りをしました。接眼部のバックフォーカス量を稼ぐために、少し、接眼部を主鏡に近づけています。



 さあ、穴あけ加工ですが、糸鋸を使いたいところですが、アーム部分に余裕がありません。ジグソーで切るときっとFRPが欠けていきそうです。
仕方がないので、金鋸のアームのないもので少しずつ切っては切り落としを繰り返しました。仕上がりは曲げることが出来ないので、のこぎりの歯の状態でした。
 仕上げはヤスリでごしごしときれいに処理をしました。

 「出来た」と接眼部をはめるとぴったりで安心していると、左手のひらが痛いのです。FRPを甘く見ていました。手袋をしていなかったので、どこかに刺さっていたガラス繊維で手を切っていたようです。まるで、かみそりで切ったような切りきずが5箇所もありました。

接眼部の改良

 R200SS用の接眼部はVixenWEBで分けていただきました。今回で三個目になります。31.7mmへの変換リングも付いているのでとてもお得です。
 しかし、3個とも製造ミスがあったようで、そのためアウトレット品となったのでしょう。
 ラックをドローチューブに前後二箇所ねじ固定をしているのですが、そのねじ位置がドローチューブと平行になっていないのです。一度失敗に気付き、ラック側に穴を開けなおして取り付けたのですが、平行にならずガイドの溝と干渉をしています。


 ということで、ドローチューブにラック固定用の穴を開け直すことにしました。
 まず、机の上にドローチューブを立て直定規で垂直線をケガキします。それから、ラックの穴に合わせてポンチを打ち、準備完了です。


 ラックを止めているねじは2mmの皿ねじです。1.5mmの穴をボール盤で開け、2mmのタップを立てます。
 2mmのタップを立てるときは怖いんですよね。タップを折ってしまった経験が2回。必ず潤滑油をさしてやらないと、進むことも戻ることも出来なくなり、力任せにボキッといってしまいました。


 組み立てですが、その前に、鏡筒の内部になる部分を黒く塗装して、デジタルノギスを接続するビンをラックに立てました。最近、ここにノギスの稼動部を接続します。

 ドローチューブの組み立てですが、ラックを固定し、テンションを加える白いプラスチックを収めて、チューブを差し込みます。そのときにドローチューブを支えている3箇所を400番ぐらいのサンドペーバーで磨きグリスを塗っておきます。

 調整はロックねじの前後にあるマイナスの芋ねじを動かして、がたが出ずスムーズに動くように調整をします。

 カメラアダプター
 MPCC(コマコレクター)を組み込むにはVixenのTリングが丁度いいようです。本来、このコレクターは2インチのアイピースに差込みカメラ回転をさせるようですが、この方法あまり信用できないように思うのです。それに、直焦点ワイドアダプターも使えません。
 MPCCとR200SS用の接眼部に付属してきたカメラ回転リングとTリングを並べてにらめっこをすることになりました。

 左:M42と2インチ  中:M60オスとM42オス  右:M42メス



 それから、TリングのM42部分をはずすと今までのTリングと違うことに気付きました。左が旧で右が新のリングです。
これだけテーパー部分が広いと直焦点アダプターと同じようにカメラ回転装置として使えそうです。


にらめっこの結果、
@ M42Tリングとカメラ回転リングを3箇所のねじ止めで固定する。
A カメラ回転リングのM42オス部分をくりぬく。
B M42Tリングを押さえている芋ねじを手で回せるねじに交換する。

やっと、製作に取り掛かれます。
製作手順


@ まず、カメラ回転リングM42オスとTリングM42メスをしっかりねじ込みます。1.5mmの3箇所の穴あけは位置決めを慎重にしました。


A 3箇所の穴あけは見事きれいに貫通したのですが、Tリングとカメラ回転リングがかんでしまってどうしても緩みません。結局、予定を変更してカメラ回転リング側のM42オスをヤスリで削り落としました。(結構大変でした。一気に貫通させたのが失敗の原因です。)


B Tリングの3箇所の穴はM2のタップを立て、カメラ回転リング側は2.2mmの穴を開けなおし、M2の皿ねじを入れるために面取りもします。


C カメラアダプター側の3箇所の芋ねじをはずします。このねじはM2.6のようです。手回しをするにはM3に変える必要があります。このまま、万力に固定をして、M3のタップを立てました。

組み立て

 TリングM42とカメラ回転リングのねじ止めはゆるみ止め液を塗り締めました。
 カメラアダプターの3箇所の手回しねじはつまみ側をボール盤に固定して回転させ、ねじ部分の先をヤスリを当てて台形に削りました。

 テーパー部に固めのグリスを薄く塗り組み上げると、手ごたえがありながらもスムーズに回転をしてくれます。



後記

 カメラに組み込んで分かった利点があります。
 今まで、直焦点ワイドアダプターを使っていたのですが、構図を決めるためにカメラを回転させると3箇所の固定ねじがカメラのフラッシュの軒に当たり困ることがありましたが、この製作したものはカメラとねじは一緒に回転してくれます。ありがたい。

スパイダー・斜鏡部
 元々のスパイダーは厚さ1mmの羽根型を使用していますが、上部から見ると明らかに穴の位置がずれていて、目で見てもきれいな十字になっていません。この位置決めをきっちりしないと、輝星の光条が又割れをしたり、長さが違ったり、太さが違ったりしそうです。
 斜鏡はオフセットがされておらず、斜鏡の調整方法も今まで扱っていた鏡筒とは違う方法になっています。このFナンバーではオフセットは是非必要でしょうね。
 まずは、元の4つの穴の位置を測定してみました。
 スパイダーをはずし、穴の中心下を通るように糸を張ってみましたが、やはり見るからに十字を描いていませんでした。

 穴の位置を接眼部の延長上を通る位置(左図の45°ずらした位置)にしようか、今の位置を修正するか、悩んだのですが斜鏡の調整ねじの位置関係からこのままの補正にしました。

 位置決めの方法はこんな方法でいいのでしょうか?
 まず、養生テープ(伸縮しないもの)を鏡筒にきっちり1周巻きます。
それをはずし、半分に折り、折り目にしるしを打ちます。それをまた半分に折り、しるしを打ちます。合計3箇所のしるしが打てます。
 基準にする穴位置を決めたいのですが、左図の穴あけではどの位置ということはないでしょう。しかし、接眼部延長を通る場合は接眼部上を基準にしたいですね。

 穴を開けて、もう一度糸を通し十字であることを確認し、、レーザーコリメートでスパイダーの中心をレーザーが通っているか確認しました。(こういうときにタバコ吸いは役に立ちます。)




 スパイダーの両端のねじの交換ですが、ボルトとナットともに交換が必要です。ホームセンターを回り、左の写真のようなものを使うようにしました。
 このナットを使うためにはボルトを短くし、M6のボルトに交換しなくてはいけません。
 ボルトには加工がしやすい真ちゅう製のものを使うことにしました。長さを決め、スパイダーを挟むために金のこで縦にスリットを入れました。

 鏡筒に仮止めをして見ましたが、鏡筒外側のボルトの出っ張りも少なく、フードをまいても邪魔にならないようです。
 ただ、あまり締めていくとスパイダーがねじれそうです。薄いロックねじを内側に入れた方がよさそうです。



次は斜鏡部に手をかけました。改造部分は次の2点です。
一つ目はオフセットをさせることです。F値が小さいので、もともとのままではけられてしまいそうです。R200SSでオフセット量は4mmぐらいだったと思います。それよりF値が小さいのでもう少し、と思って4.5mmオフセットさせました。
実際に模造紙にでも書けば正確な値を決めれるのでしょうが、適当です。

制作方法は
3mm厚のアルミ板を斜鏡の底の大きさに合わせて円形に切り、軸になる凹みをドリルでくり、調整用の引きねじ3個分をあけタップを立てました。

主鏡部
 主鏡部は特に改良を必要とするところはなく、光軸の調整ねじをインチねじからM5のステンレスねじに交換をしました。
 主鏡の周りは黒い画用紙を巻き、3つの押さえ爪を隠すために右のような環を作りました。アルミ1mm厚ぐらいで作ろうと思ったのですが、0.5mm厚のアルミ板しか売っておらず、仕方なくこれで作り始めたのですが、はさみで切れるのが楽チンでした。
 内円は真円を目指したのですが、いかがでしょうか。この処理が恒星の像に影響するようです。
 製作に熱中し、主鏡部の写真を撮り忘れました。
鏡筒部
 鏡筒をカットする必要は特になかったのですが、ケースに収めるためです。好んで使っているケースは軽くて丈夫で安い「アイリスオオヤマ」のRVボックスです。その内寸73cmが目標でした。
 以前の接眼部やファインダー台のパテ埋めして、黄色にふいてやりました。

組み立て
 スパイダーと斜鏡はうまく十字がとれているようです。VC200Lで使っている巻きフードもうまくフィットしてくれそうです。
 接眼部にはデジタルノギスをカットして取り付けました。鏡筒ごとにこのノギスをつけていると結構お金がかかりそうですが、最近通販で1200円ほどで売っているんですよね。3個まとめ買いをしてあったものです。




 主鏡部をお見せするのは初めてでしょうか。
 裏からは鏡が丸見えです。鉄板でも敷こうかと思ったのですが、温度をなじませるにはこれもいいかもしれません。ただ、撮影時はキャップをしておかないと光が入りますね。
ファーストライト
 08年の6月7月は曇りの日が多くなかなかファーストライトの機会がありませんでした。この日も雲が多かったのですが、明け方晴れることを信じて護摩壇に出動をしました。
 薄明まで時間がありませんでしたので、右の画像15分6枚だけの撮影に終わりました。
 R200SSと純正コマコレクターとの主観的な比較ですが、中央部の像を犠牲にせずコマを修正しています。F3.5を修正しきれるか心配でしたが、周辺までまずまずの星の像を描いてくれます。
 また、ライトフラット画像もR200SSと比べてもかなり平坦です。なぜだろう?
 バーダープラネタリウム社製のコマコレクタの優れている点かもしれません。

まだまだ、改良の必要なところはありますが、大事に使っていきたいと思います。
2008年8月