反射望遠鏡 200mm F3.5 PARKS社製 Ver.4
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 今回でこの鏡筒も4回目の改造になりました。そろそろ落ち着かせたいのですが、どうなることでしょうか?
 ε鏡筒は素晴らしい設計です。基本的にはニュートン反射もその素質を持っておりコマ収差をうまく修正できればεに匹敵する星像を得られるはずです。それに、少し長い焦点距離でM8や網状星雲、猫の手・・・細部まで表現したい対象がいっぱいです。R200SSもそうですが700から800mmには魅力的な対象がいっぱいあるように思います。ただ、F4以下の明るいF値で撮影できることがわたしの条件です。
 今回の改造は新しいコマコレクターを試すこと。より精度の高い光軸を追い込めるようにセルを改造することが大きな改良点です。

接眼体の改造
 この鏡筒を改造して1年ほど使用してきましたが、いろいろ問題点が出てきました。
 その一つが接眼部の精度です。
 R200SS用の接眼部は構造が簡単でいいのですが、ドローチューブをスムーズに送り出すことと、確実に固定することの両立が難しいのです。せっかく0.04mm単位でピントを出したのにロックねじを締めつけることでその精度を狂わしてしまうことが多々ありました。
 今回、白いプラスチックを2点で押さえていた部分の調整をあきらめ、左画像のねじを使って改造をすることにしました。
 ドローチューブにテンションをかけている調整ねじを外し、M6のねじ切りをします。もちろん2点ともこのねじを組み込みます。

 このいもねじですが、先についているボールは結構自由に動いてくれます。この機能を使ってドローチューブをスムーズに動かそうというつもりです。
 テンションをかけている白いプラスチックにも穴をあけてボールが出てくるようにします。白いプラスチックの役目はロックをかけた時の押さえの役割だけになります。
 右の画像は適当な位置を探してロックナットをかけておきました。
 動きはいたってスムーズになりましたが、ドローチューブはアルミなので圧のかけ具合が難しくなります。うん、プラスチックの代わりに鉄とステンレスで作りドローチューブに固定した方がよりいいように思いました。

接眼台座の補強
 「しばたさん」にお願いをして1.5mmの補強板をつくっていただいました。以前は3ミリ厚のアルミを万力で挟みながら徐々に曲げましたがかなり大変でした。しばたさんは昔の洗濯機の脱水機のようなもので綺麗に曲げてくれます。

 それから、εのときと同じように接眼体の固定ねじの隣にセットスクリューねじをそれぞれ設けて光軸調整がしやすいようにしました。

コマコレクターの交換
 撮影仲間のt-maruさんに無理を言って購入いただいたバーダープラネタリウム社のRCCTです。
まずは、長い!
 それからバックフォーカスが91.5mm、びっくりするほど長い!

 オフアキをしない私にはこれらの長さが悩みになりそうです。
 91.5mmというバックフォーカスの.5mmまで指定しているということはこのバックフォーカスはきちんと出さなくてはいけないんだろうな。
手元にあるリング類でまかなうため
EFマウント-T42メス-オス42オス(フリップミラーの部品)-メス42メス(フリップミラーの接眼体切断)-RCCTと、寸法調整しながらつなぎました。
 こうマウントにつけて見るとちょっとした望遠鏡に見えますね。
 この長さがドローチューブを突き抜け鏡筒内に出てきます。くる出し量を多くはしたくないのですが、仮に接眼環を付けて妥協しています。
左から、
 R200SSコマコレクター
 バーダーMPCC
 バーダーRCCT
 何を撮影したのかというと。RCCTは方眼が歪まないのです。前者2つは非球面レンズのような周辺だけが歪むのです。

 レンズの長さは伊達ではないといいのですが。

主鏡セルの改造
 主鏡の前面は3つの押さえ爪で保持をしていますが、今回円形のマスクと兼ねてアルミの寸胴なべを使って製作することのしました。
まずは工具を改良しました。手元にある金属用の円形のホールソーは直径10cmまでしか空けられません。それでアーム部分を長いボルトを使ってつくり替えました。
まだ、ホールソーの製作にも苦労をしましたが、私の持っているボール盤は小型のものなのでこの直径がはまりません。それで仕方なく電動ハンドドリルでゆっくりまわしながら削っていくことにしました。
 まあ、削る音はうるさいし、垂直を保つことは難しいし、腕はだるくなるし、結局小一時間の格闘が続きました。

 苦労のかいがあって無事に穴を空けることができました。でも、二度としたくない作業です。
 主鏡のセル部分の構成部品です。

左1 鍋を利用した主鏡の前面の押さえ
左2 主鏡のセル
左3 セルの支持環
左4 セルのカバー

 元々の主鏡セルを利用して改造をしました。
 主鏡をセルに収める方法は主鏡縦方向は前面を鍋で固定して、背面から写真に写っている円形のアルミに貼ったコルクで3点支持をします。
 側面からは厚さ3mmのアルミ板を使ってRを付けたものを切り取り、コルクを貼ったものを側面から6点で支持をします。
 それぞれのコルクを貼ったアルミ板の中心にはドリルでへこみを付けています。その凹みにボール付きセットスクリューねじで圧迫調整をします。
 鍋の前面カバーをかけてしまうと後から側面の圧迫調整ができなくなるので、カバーをかけてから調整ができるように大きめの穴をあけています。ただ、この構造のため、側面の調整ねじのロックナットを設けることはできません。
 ここからは主鏡の圧迫調整になります。方法はε180と同じ要領になります。

1、鍋セルカバーをセルときちんと固定します。
2、逆さにして主鏡背面を手で押さえこみ、鍋セルカバーの前面に密着させます。
3、主鏡背面の3点セットスクリューねじを軽くねじ込んでいき、円形のコルク付きアルミを指で回転させ、回転はするが浮きが出ない程度でロックナットをかけます。
4、側面は対角線上にねじ込まずに当たればいい程度にこれを2回繰り返します。

 感覚に頼らなくてはいけない作業ですが、「ガタは出ないけど、押さえていない」と言うつもりで調整をします。
 今回もう一つ大きく改造をしたのは主鏡の調整機構です。以前はひきねじと押しねじが大きく離れており、また、セルの支持環とセルが2cmほども離れていました。このような状態だと車での移動のたびに主鏡が動き、現地での光軸調整が必要でした。

 調整ねじはタカハシの反射に用いられている親子ねじとロックナットの組み合わせです。いつもこういうときにお願いするしばたさんに作っていただきました。ただ、既存のねじ穴をくり直すことにしたため正確な位置決めにはかなり苦労をしました。このセルは外国製。穴あけの精度もかなり雑でした。
 今回ついでに背面のセルカバーとファンを取り付けました。

 板材は3mmの黒い発砲塩ビです。穴あけも楽だし、荷重のかかるところではないので適当だと思いました。
 ファンはパソコン用の8cmの薄型(980円)を購入しました。電源部分からは3線が出ていますが1本はセンサー用です。今回の場合は赤が+、黒が-、白を切断しました。ただ、物によってはセンサー用が黄色だったり、+が白だったり、統一されていませんから確認が必要です。
 おお、自己満足ですがなかなかかっこよくなってきました。

 今回の改造でまた鏡筒を2cmほど切りました。これで元のときより5cmは鏡筒が短くなってしまいました。これでピントはぎりぎり出る状態です。できるだけドローチューブの繰り出し量を減らすため、せるの支持環の固定するねじを決めるときは慎重に計算とテストをしました。

 主鏡の調整はイプシロンとは違い筒先を上にして親ねじを動かして調整するのが便利です。(イプシロンの場合は下に向けて親ねじで)

 改めて、主鏡調整の親子ねじは固定が強固で少し慣れれば調整がしやすい構造になっています。
RCC1の調整
先日満月期に仮組をしてテスト撮影をしましたが、周辺部はとんでもない像になっています。RCC1のバックフォーカスM42で91.5mmの基準値ではだめなことが分かりました。コマが過補正気味です。まあ、F値が3.5ですから基準値ではだめだと思っていましたが、あまりにもひどい状態に気を打っています。

つづく

2012年8月